最近の情報漏洩の酷さを見ると「これはいいアイデア!」と思ったものの……退会前に架空の住所へ変更する行為は、法律上問題ないのかもちょっと気になるところ。
また、退会したあとも個人情報が企業に残っているとしたら、そっちも心配ですよね。
調べたところ、住所変更による情報漏洩対策には限界があり、架空住所の登録には注意点もありました。
今回はSNSで話題になった投稿の内容から、住所変更の効果や違法性、退会後の個人情報の扱い、削除請求の方法まで詳しく解説します。
退会前の住所変更がSNSで話題になった理由
企業の情報漏洩ニュースが毎日のように流れるなら、X上で次の投稿が注目を集めました。
サービスを退会するときは、退会ボタンを押す前に住所を「100-0001 東京都千代田区千代田1-1-1 エンペラーパレス103号室」などで上書きしておくと、情報漏洩時のダメージを最小限に抑えることができます 法律では退会時のデータ削除は努力義務なので…
— ういにゃん【アニソンDJ】 (@ui_nyan) October 8, 2026
その内容は、サービスの退会ボタンを押す前に、登録住所を架空の住所へ書き換えておくというもの。
たとえば、実在しない建物名や部屋番号を含む住所に変更しておくことで、退会後に企業から個人情報が漏洩しても、自分の本当の住所が流出するリスクを減らせるのではないか、というアイデアでした。
この投稿が注目された背景には、サービスを退会しても、登録した個人情報が必ずしも削除されるわけではないという事情があります。
普段、ネットショッピングや会員サービスを利用するときには、氏名や住所、電話番号、メールアドレスなどを登録しますよね。
ところが、退会手続きを済ませても、それらの情報が企業のシステム内に残っている可能性があります。
そのため、退会後に企業がサイバー攻撃などを受けた場合、過去の利用者の個人情報まで流出するリスクがあるのです。
【最近の情報漏洩まとめ(10月1日〜9日)】 ・第一興商:約872.4万件 ・ローソン:約215.5万件 ・ミスターマックス:約173.5万件 ・スカラコミュニケーションズ:約71.3万件 ・旭化成セラピューティクス:約51.4万件 ・シチズン時計:約10万件 ・損保ジャパン:約6万件 ・アクティブ:約5.5万件 ・ハイホー:約3.85万契約 ・チャーム:約2.5万件(追加確認分) ・楽天ドライブ:約1.5万アカウント ・JOGMEC:約8,500件 ・戸田建設:従業員4,778人分ほか ・集英社:2,835件ほか ・日本経済新聞社:1,646人分 ・HIS:最大627人分 ・日本原子力研究開発機構:175人分 ・ニッポンレンタカー:55人分 ・日経BP:26人分 ・skyticket:件数未公表 なかなかの有名企業が連なってますなぁ
— 希望エンジニア36 (@okd61807313) October 8, 2026
一方、今回の投稿で紹介された方法には、気になる点もあります。
- そもそも、登録住所を変更しただけで、過去の個人情報まで消えるのでしょうか?
- また、架空の住所を登録すること自体に、法律上の問題はないのでしょうか。
SNSではユーモアを交えたアイデアとして広まりましたが、実際の情報漏洩対策としてはどうなのか?気になる人も多いのではないでしょうか?
退会前の住所変更は情報漏洩対策に有効か?
結論からいうと、退会前の住所変更によって情報漏洩の被害を減らせる可能性はありますが、確実な対策ではありません。
なぜなら、企業が保存している個人情報は、現在の登録情報だけとは限らないからです。
たとえば、通販サイトに自宅の住所を登録していた人が、退会直前に別の住所へ変更したとしましょう。
企業の会員データベースで住所が上書きされれば、そこに保存されている最新の住所は変更後のものになります。
そのため、仮にそのデータベースから情報が漏洩した場合、本当の住所が流出するリスクを減らせる可能性があります。
ただし、ここで注意したいのが、過去の登録住所まで消えるとは限らないという点です。
企業のシステムによっては、次のような場所に以前の住所が保存されていることがあります。
- 登録情報の変更履歴
- システムのバックアップデータ
- 過去の注文履歴や配送記録
- 請求書や決済に関する記録
- 外部の委託業者が管理するデータ
つまり、現在の住所を変更しても、別の場所に本当の住所が残っている可能性があるのです。
さらに、情報漏洩で流出するのは住所だけではありません。
メール見たらあたしもタイムズで個人情報漏洩してました!どうすんのこれ! https://t.co/Uq5jUi3Pra
— 🇯🇵東京まなな🇯🇵 (@tokyomanana) October 8, 2026
氏名や電話番号、メールアドレス、購入履歴などが残っていれば、そこから個人を特定されるおそれもあります。
住所だけを書き換えても、ほかの個人情報まで守れるわけではないんですね。
また、退会前にメールアドレスや電話番号まで架空のものに変更すると、本人確認のメールや認証コードを受け取れなくなる可能性があります。
その結果、退会手続きそのものが進められなくなることも考えられます。
情報漏洩対策として大切なのは、登録情報を単に書き換えることではなく、企業に不要な個人情報を残さないこと。(といっても個人でできることには限界がありますが……)
住所変更は一部のデータに対して効果が期待できるものの、それだけで安心するのは避けた方がよさそうです。
関連記事:複数企業から漏れた個人情報はダークウェブで統合されるのか―名寄せの危険性を調査
退会前に架空住所へ変更するのは違法?
退会前に架空の住所へ変更することについて、法律上の問題があるのか気になる人も多いでしょう。
結論として、自分のアカウントに架空の住所を入力しただけで、直ちに犯罪になるとは限りません。
日本には、一般的なネットサービスで架空の住所を登録する行為を、一律に犯罪とする法律があるわけではありません。
ただし、だからといって、どんな場合でも問題ないとは言い切れないのです。
まず注意したいのが、サービスの利用規約です。
通販サイトや会員サービスでは、正確な氏名や住所、連絡先の登録を求めていることがあります。
そのようなサービスで架空の住所を登録すると、利用規約違反になる可能性があります。
また、未払い料金や未完了の取引がある状態で住所を変更すると、企業からの重要な連絡が届かなくなるおそれもあります。
特に、支払いを免れる目的で虚偽の情報を使った場合には、単なる住所変更とは異なる法的問題が生じる可能性があります。
さらに、SNSの返信では、首相官邸や個人情報保護委員会など、実在する公的施設の住所を使うアイデアも挙がっていました。
ただし、実在する施設の住所を勝手に登録することには注意が必要です。
郵便物や問い合わせが実際にその施設へ向かい、関係者に迷惑をかけてしまう可能性があるからです。
なお、実在する地域の住所に架空の建物名や部屋番号を組み合わせた場合、郵便物が宛先不明で返送されることも考えられます。
そのため、架空の建物名を使った場合と、実在する施設の住所をそのまま使った場合では、第三者に与える影響も異なります。
第三者に迷惑や損害を与えるような使い方は別の問題につながるため避けた方が無難です。
状況によっては、民事上の損害賠償責任などが問題になる可能性もあります。
もちろん、架空の住所に変更したという事実だけで、必ず損害賠償や刑事責任が発生するわけではありません。
具体的な目的や被害の有無、サービスの契約内容などによって判断は変わります。
また、金融機関や本人確認が必要なサービスでは、住所の正確性が特に重要になります。
こうしたサービスで事実と異なる住所を申告すると、本人確認や取引に支障が出る可能性もあるでしょう。
では、情報漏洩を防ぐためなら、架空の住所への変更は認められるのでしょうか?
残念ながら、情報漏洩対策という目的があれば、虚偽の登録情報がすべて許されるわけではありません。
個人情報保護法が企業に求める情報管理の義務と、利用者がサービスの規約に従う義務は別の問題だからです。
そのため、退会前に架空住所へ変更する方法を、誰にでもおすすめできる安全な対策とはいえません。
法的なリスクを避けたい場合は、企業が用意している正式な退会手続きや個人情報の削除請求を利用する方が安全でしょう。
おすすめ記事:AIに個人情報を教えてはいけない理由
退会後の個人情報は削除されずに残る?
ネットサービスを退会すれば、登録した個人情報もすべて削除されると思っている人は多いかもしれません。
しかし、退会したからといって、企業が保有する個人情報が必ずすべて消えるわけではありません。
この点については、日本の個人情報保護法が関係しています。
個人情報保護法第22条では、企業などの個人情報取扱事業者に対し、利用する必要がなくなった個人データを遅滞なく消去するよう努めることを求めています。
つまり、一般的な消去義務については、いわゆる努力義務となっているのです。
また、個人情報保護法は、個人情報の保存期間や廃棄時期を一律には定めていません。
そのため、サービスを退会したあとも、一定の個人情報が企業に保存されている場合があります。
たとえば、通販サイトでは、退会後も過去の注文履歴や取引に関する記録を保存する必要があるかもしれません。
法令上の保存義務がある情報については、利用者が退会しても一定期間残ることがあります。
一方で、企業が必要のない個人情報を無期限に保有してよいという意味ではありません。
利用目的を達成し、保有する合理的な理由がなくなった個人データについては、消去するよう努める必要があります。
さらに、個人情報保護法第35条では、一定の条件を満たした場合に、本人が保有個人データの利用停止や消去を請求できることも定められています。
つまり、企業側の消去が努力義務だからといって、利用者に削除を求める権利がないわけではないんですね。
ただし、すべての個人情報について、無条件に削除を要求できるわけではありません。
退会後も法令上の保存義務が残っている場合などは、請求しても直ちに消去されないことがあります。
退会と個人情報の削除は、必ずしも同じ手続きではないという点を覚えておきたいところです。
個人情報の削除請求と安全な漏洩対策とは?
退会後の情報漏洩が心配な場合、架空の住所へ変更する以外にも対策があります。
そのひとつが、企業に対して個人情報の消去を正式に請求する方法です。
個人情報保護法第35条では、利用する必要がなくなった場合など、一定の条件を満たすときに、本人が保有個人データの消去を請求できると定めています。
請求に理由があると認められた場合、企業は原則として必要な範囲で利用停止や消去などの対応を行う必要があります。
では、実際にはどのように請求すればよいのでしょうか?
まずは、利用していたサービスの公式サイトで、プライバシーポリシーや個人情報に関する問い合わせ窓口を確認しましょう。
そこから、退会後の登録情報について消去を希望する旨を伝えます。
たとえば、次のような内容です。
このように依頼すれば、企業側に個人情報の取り扱いについて確認を求められます。
ただし、消去請求をすれば、すべてのデータが必ず削除されるというわけではありません。
法令上の保存義務などがある場合には、情報が残ることもあります。
また、個人情報保護法上の「消去」には、データを削除する方法だけでなく、特定の個人を識別できない状態にする方法も含まれています。
そのため、どの情報がどのように処理されるのか、企業に確認することが大切です。
そして、普段からできる情報漏洩対策としては、次のような方法も考えられます。
- 利用しなくなったサービスは早めに退会する
- 必要のない個人情報は登録しない
- サービスごとに異なるパスワードを設定する
- 可能な場合は二段階認証を利用する
- 不要な配送先や保存済みの決済情報を削除する
- 退会前に個人情報の保存・削除方針を確認する
特に、サービスごとに異なるパスワードを設定することは、情報漏洩による被害の拡大を防ぐうえで重要です。
また、メールアドレスを用途別に使い分けることで、どのサービスから迷惑メールが届いているのか把握しやすくなる場合もあります。
退会前の住所変更だけに頼るのではなく、個人情報を必要以上に登録・保存させないことが大切です。
SNSで話題になった方法は、情報漏洩への関心を高めるきっかけにはなりましたが、万能な対策ではありません。
自分の個人情報を守るためにも、正式な削除請求と日頃のセキュリティ対策を組み合わせていきたいですね。
……これだけ企業が個人情報を漏らしておいて、漏らされた個人が対処しろというのは腹立たしい話しですが、対策は色々と考えておきたいですね。


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