「ホルムズ海峡封鎖でナフサ不足が懸念されるなか、国内在庫は2~3週間分程度とさています。れ」
…最近、こんなニュースをよく耳にしませんか?
「ナフサ」は石油から取れる物質の一つで、あらゆる産業に関わっています。
こんにちは、ハトムギ(@hatomugi_bikatu)です。仰々(ぎょうぎょう)しい感じのタイトルになってしまいましたが簡単にいうと・・・
「ナフサって原油から取れて、あらゆるものを作るのに使ってるんだって!だけど、それが不足しそうなんだってさ。え、これってオイルショックじゃない?」と、いうことです。
ホルムズ海峡の閉鎖が続いても、原油の備蓄があるし大丈夫かなぁ~と、思っていたのですが、、、
調べてみると石油以上にナフサ不足の方が深刻ではないか?ということに気が付いたのでご紹介します。(危機を煽るものではないので、健康な一般人ができる対策も紹介しています。)
そもそもナフサとは?
ナフサとは、原油(石油)を精製する過程でできる「軽質の石油製品」のことです。ニュースでは、「粗製ガソリン」と呼ばれることが多いですね。
沸点はおよそ30〜200℃の範囲で、ガソリンと灯油の中間あたりに位置しています。
で、日本の石油化学製品(プラスチックとか合成繊維とか)のほとんどはナフサから作られています。
ナフサの作り方(原油を蒸留するとどうなるの?)

画像引用:JPCA 石油化学工業協会「石油化学コンビナートを探る」https://www.jpca.or.jp/studies/junior/tour01.html
実は石油はそのままで製品を作れる訳ではなく、石油精製工場で蒸留して、ガソリンや灯油といった製品にしてから使います。
「常圧蒸留装置(トッパー)」と呼ばれる設備に入れて熱をかけ、沸点の違いにより成分を分離するそうです。
分離してできる石油製品と、それぞれ石油製品が取れるおおよその割合は以下の通りです。
| 留分名 | 沸点の目安 | 収率(目安) | 主な用途 |
| ガス分 | 〜30℃ | 約2〜3% | LPG(プロパン・ブタン) |
| 軽質ナフサ | 30〜90℃ | 約10〜12% | 石油化学原料、ガソリン |
| 重質ナフサ | 90〜200℃ | 約10〜13% | 石油化学原料、ガソリン |
| 灯油 | 150〜250℃ | 約10〜15% | ジェット燃料、暖房 |
| 軽油 | 200〜350℃ | 約15〜20% | ディーゼル燃料 |
| 常圧残油 | 350℃以上 | 約40〜50% | 重油・アスファルトなど |
見ていただくと分かるとおり、原油から取れるナフサ(軽質+重質合計)の割合は、20%くらいしかないという点です。
仮に原油が100あったとしても、そのうち20%程度しかナフサは取れません。残りの80%はガソリンなど別の用途に使われます。
さらに、ナフサが取れる割合は原油の産地によって大きく変わってきます。日本が輸入している中東産の原油は軽質でナフサがたくさん取れるそうです。
一方、カナダの重質の原油では、ナフサが取れたとしても10%以下になることもあるそうです。
参考:日本経済新聞社「石油精製とは 原油から重油生産、全体の16%」
ナフサからできるもの

画像引用:JPCA 石油化学工業協会「石油化学コンビナートを探る」https://www.jpca.or.jp/studies/junior/tour02.html
取れたナフサをさらに高温で分解すると、エチレンやプロピレン、ブタジエンなどの物質(石油化学基礎製品)が生まれます。
石油化学基礎製品からは、次のように身の回りのあらゆるもの(石油化学製品)が作られていきます。
| 製品 | 具体例 |
| プラスチック類 | ポリ袋・ラップ・容器・ペットボトルなど |
| 衛生用品 | おむつ・生理用品・マスクの不織布など |
| 医薬品 | アセトアミノフェンのような有効成分・カプセルシートなど |
| 洗剤・化粧品 | 界面活性剤・シャンプー・リンスなど |
| 合成繊維 | ポリエステル・ナイロン・アクリル |
| 農業資材 | 農業用フィルム・農薬や合成肥料の材料の一部 |
| 工業製品 | 自動車バンパー・電子基板の絶縁材・塗料 |
……こんなの、ほぼ全部ですよね(笑)
試しに、今、周りを見わたしてみてください。
ナフサが絡んでいないものってどの程度ありましたか?
・・・私はマグカップと机くらいしか思いつきません。(これも全くナフサが絡んでいないのかは不明。)
現代の産業にナフサが極めて重要な理由
現代の産業にナフサが極めて重要な理由は、ナフサ依存度が非常に高いためです。
このため、ナフサは「産業の血液」や「産業のコメ」と例えられるほどです。
では、ナフサがなくなると、どのような影響が出るのでしょうか?
| 業界・分野 | 影響 |
| 医療分野 | 注射器・点滴バッグ・薬のカプセルシートなどが作れなくなる |
| 食品分野 | 食品の包装フィルムや保存容器が不足し、物流に影響の恐れ |
| 農業分野 | 農業用フィルムや農薬の原料が不足し、長期的に作物の収穫量に影響 |
| 衛生分野 | おむつや生理用品の生産がストップする可能性がある |
| 建設・電子 | 断熱材・配管・電子部品に使われるプラスチック類が不足 |
以上のように、ナフサの供給が途絶えるとあらゆる産業に影響が波及します。
人工透析の回路不足が懸念され、徐々に話題になっていますね。
このため、「ガソリンがない!」といった分かりやすい危機ではなく、、、
じわじわと「値段を上げざるを得ない」「物が作れない」という感じで影響が広がっていきます。
電力不足なら節電で対応できますが、医療分野の素材が消えたとき、代わりになるものはほとんどありません。
令和のオイルショック=ナフサショック?
以上のように、「令和のオイルショック」や「第三次オイルショック」が起きるとすれば、原油の不足ではなく「ナフサ不足」から始まりそうだなと、私は思いました。
プラスチックの日本国内での生産量は、1970年は約513万トンだったものが、2021年には約1000万トンまで増加しています。
日本のナフサ在庫は2〜3週間分
日本のナフサの在庫はわずか2〜3週間分程度といわれています。
調達先は中東4割、国産4割、その他2割。
なお、この「国産4割」は、輸入した原油を使っています。
既に製品化されている物の在庫は、2カ月分程度企業などにあるとされていますが、それでも6月まで持つか持たないか程度でしょう。
参考:東洋経済オンライン「ホルムズ海峡封鎖でナフサ不足が浮上、調達メドはGW前まで、化学品の生産・供給不安で影響必至、情報発信には苦慮」
参考:経済産業省「ナフサについて」
原油の備蓄があっても、ナフサを大量に作れるわけではない

でも、日本には原油の備蓄があるんだから、ナフサを作ればいいんじゃない?
と思いますよね。
でも、そんな簡単な話ではないようです。
先ほど紹介したとおり、原油からナフサが取れる割合は20%程度しかありません。
さらに、原油からナフサをピンポイントに抽出する方法はなく、作ればガソリンや重油もできてしまいます。そうなると、需要と供給のバランスが取れなくなってしまうそうです。
また、国内の製油所の処理能力にも限界があるので、一気に大量生産できる訳ではないようです。
関連記事:【今さら聞けない?】1バレルって何リットル?他にもよく分からない単位をまとめました!
代替輸入先の確保も難しい
政府や企業は代替輸入先を探しているものの、ホルムズ海峡が閉鎖して世界的に原油が不足しているので難しいと考えられます。
- 供給量の壁:他の地域(東南アジアや南米・アフリカなど)のナフサでは、中東の代わりになれるだけの量を供給できない
- 競合の壁:韓国・インドネシアなどのアジア各国も同じ代替先を奪い合っている
- 時間の壁:調達先を切り替えても、実際にナフサを積んだ船が届くまで数日~数か月かかる
また、代替先からナフサが無事に届いて、製品にして、店頭に並べて・・・という、実際に消費者の手に届くまでの時間も考えると、、、
どこかで不足する可能性は十分にあると思います。
ナフサ不足+原油不足のオイルショック発生の可能性
令和のオイルショックは、「原油不足によるエネルギー危機」と「ナフサ不足による産業・生活基盤の危機」が同時に起きる可能性があります。
- 原油不足(エネルギー危機): ガソリン高騰・停電・暖房難・物流コスト上昇
- ナフサ不足(産業基盤の危機): プラスチック・薬・衛生用品・農業資材の不足
- 両方同時発生(複合危機): 物資不足×物流難×パニック買い
過去のオイルショックと違うのは、現代社会のナフサ依存度が桁違いに高いという点です。スマホも、医薬品も、農業も、すべてナフサありきです。
このように、「令和のオイルショック」が起きたとすれば、エネルギー危機より先に「素材の危機」として生活に影響が出てくる可能性が高いんじゃないかと思います。
関連記事:ホルムズ海峡はいつまで閉鎖する?5つのパターンと起こりうる事態を考えてみました
【朗報】ナフサ依存からの脱却を進めている企業もある
以上のように、このままホルムズ海峡の閉鎖が続けば、ナフサ危機が起こりそうなのは事実です。
しかし、企業だってそれは承知の上で動き出しています。
先ほど代替は難しいとは書いたものの、ナフサの代替先を探し始めている企業もあります。
参考:日本経済新聞社「三井化学や三菱ケミカル、中東外からナフサ代替調達 ホルムズ封鎖で」
参考:Yahoo!ニュース「ナフサの代替調達進む、中東以外からが平常時の2倍に 4月分、「切れ目なく供給する」」
「シェール革命」といい、2018年頃からエネルギーの依存度を下げるため、原料を米国のシェールガス由来のエタンや、LPGを使う動きも進んでいるそうです。
参考:経済産業省・資源エネルギー庁「2018年5月、「シェール革命」が産んだ天然ガスが日本にも到来」
さらに、使用済みプラスチックを化学的に分解して、再び原料として使う技術(資源リサイクル)を強化する企業も出てきています。
参考:日本経済新聞社「[社説]中東発の供給不安に企業は柔軟に対応を」
これらは中長期的な取り組みなのですぐに効果が出るとは限りませんが、店頭から一切ものがなくなる事態は避けられるのではないか?と思いたいです。
【ナフサ不足】自分の生活を守るためにできること
ナフサ不足が懸念されるなか、では一般消費者は何ができるか?考えてみました。まずは冷静になるのが一番ですね。
今、私が思っているのは必需品の備蓄を1~3カ月分程度と厚くしつつ、代替製品を生活に組み込んでいく方法です。
例えば、プラのゴミ袋の代わりに新聞紙を使うなど、日用品なら簡単に取り入れられる代替品はいくつもあります。
| ナフサ由来製品 | 代替の例 |
| ポリ袋・ラップ | 蜜蝋ラップ・ガラス容器・琺瑯容器 |
| 合成繊維の衣類 | 綿・麻・絹・ウールなどの天然素材 |
| プラスチック容器 | ガラス・木・金属製品 |
| プラスチック製スポンジ | 天然素材のたわし・麻布 |
| 化学系洗剤 | 石けん系洗剤・重曹・クエン酸 |
代替品の多くは使い捨てではないので、生活コストを下げることにもつながります。(初期費用はかかりますが…)
1週間のうち例えば3日は代替品を使う。もし、プラより使いやすいのなら完全に切り替える。で、1~3カ月分の備蓄品はできるだけ残しておく。
こんな感じでやりくりしていけば、そのうち流通量も価格も元に戻るかなと思っています。
関連記事:【厳選】オイルショックに備える!今すぐストックしたい日用品7選
あとは、健康に全力で気を使ったほうがいいですね。
関連記事:【エンハーブ】「ストレスでキリキリしちゃう時に」は王道の味でリフレッシュ♪|レビュー

コメント